2017-08

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欲望 - 2017.01.17 Tue

「欲望」
(1966/イギリス+イタリア/BLOW-UP)


blowup02.jpg


昨年最後に見た作品です。
1967年カンヌ映画祭パルムドール受賞。
ミケランジェロ・アントニオーニ監督初英語映画、カラー2作目。


アントニオーニ作品は昔、「愛の不毛三部作」あたりを見て、なんかもやっとした印象だけが残った。
果たして・・・

前半はある写真家のファッションフォトグラファーとしての生きざまを描く。
美しいモデルたちを相手にしているこの男、彼女たちを見下すかのような傲慢でヤなヤツ。
ロールスロイスのオープンカーを乗り回し、すかしてるヤツなのよ。
だけど魅力的ではある。
デヴィッド・ヘミングスが好演。

blowup04.jpg


このターンでは抽象画的表現が好きなアントニオーニの印象的な美しいショット多数。

blowup07.jpg

blowup05.jpg


TOP画像のモデルは、当時のトップモデル ヴェルーシュカ(「007カジノロワイヤル」)
「欲望」といえばこのTOP画像のシーンが有名だけど、本編自体には特に関係ないのよね。

若い若いジェーン・バーキン(左)
blowup01.jpeg

そして物語は後半へ。
写真家はその一方で社会派の硬派な写真も撮っていて、近々その写真集を出す予定。
追加の写真を撮るため、ふらっとある公園に赴く。
そこにはカップルがいて、何気なく彼らを撮影する。

blowup08.jpg

と、カップルの女性が気づき、ネガを渡すように言う。
モメている内に男性が消え、女性も慌てて去っていく。
スタジオに戻ると、さっきの女性が現れ(どうして彼の居場所がわかったのか?)、写真が公けになると身の破滅と訴える。
女性は、ヴァネッサ・レッドグレイヴ。

blowup09.jpg

チロルの物心ついた時すでにこの人はおばさんだったので、若く美しいヴァネッサにびっくりぽん!(この時29歳。ちなみに身長が181cmもある!)
男は女性にフェイクのネガフィルムを渡す。

彼女が帰った後フィルムを現像してみると、意外なものが映っている!
カップルの二人はある方向におののき、その先には二人に狙いを定めた銃口があった。
その次のショットでは、カップルの紳士が倒れていた。

blowup12.jpg


この写真、ちょっと見にはわからない。
写真家が、「何かおかしい・・・」と写真をどんどん引き伸ばす(=blow-up) ところでわかって行く。

blowup11.jpg


写真家は急いで公園に戻ると、果たしてそこには紳士の死体があった。
物語は一挙にミステリ仕立てになって行く。
紳士は誰なのか?政府の高官?大会社の社長?
なぜ、誰に殺されたのか?
そして、写真家の身は?
ドキドキする展開に・・・・。

ところがそこはアントニオーニ!
何も語られない。何もわからない。
ミステリから不条理劇になって行く――


なんじゃあこりゃあああああ

見終わったところで、チロル、ポカンです。
どうやらこの作品は、映画史上に残る難解映画だそうで。
ならしょうがないっか!?
と思ったら、DVD特典の解説音声があった!!
アントニオーニの研究者ピーター・ブルネット(ジョージメイソン大学で英語と映画研究の教鞭を執る)による解説を聞きながら見直してみた。

はああああ こりゃすげ~~

ふつーに流して観ていたワンシーンワンシーンに意味があった!

こういう解説でありがたいのは、実は意味のあるシーンよりも、何か意味ありげなシーンを「これは実は特に意味がない」と言い切ってくれること。
あ、なんだ、意味わかんなくてもいいってことネ!といちいち安心できる。
いやいや解説があってもこれは手ごわい。

特にラストのスウィンギングロンドンの若者たちによる無言のテニス劇(エアテニスというかテニスのパントマイムみたいな)にはまいっちんぐまちこ先生☆
ピーター・ブルネットによると、このシーンについては多くの解釈があるようです。

「もっとも深く、哲学的な意味を持つ映画」 
だからね!

写真家が街でヴァネッサを見かけて追いかけると、そこはライブハウス。ヤードバーズがライブ中。
若き日のジミー・ペイジとジェフ・ベックが拝める。

blowup13.jpg


解説によるとこの映画は当時の問題作で、ヴァネッサとデヴィッド・ヘミングスが行きずりの関係を持つこと、マリワナパーティーのシーン、おそらく一般映画で初めてヘアが映ること(ジェーン・バーキンたちモデルの)など物議をかもした。
この映画の多くのシーンはのちにパロディ含め多々引用されることになる。観ておくべしですね。

blowup10.jpg


原題は、「BLOW-UP」。 本文でも述べた通り、写真の「引き伸ばし」のこと。邦題の「欲望」というのは全くミスリードさせる。“欲望”というのは全く感じなかった。
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● COMMENT ●

もしかしたら

チロルさん、こんばんは。
とうとうアントニオーニの「欲望」をご覧になったんですね。
難解さに対するチロルさんの困惑ぶり、当惑の様子が感じられてドキュメンタリーを観ているようです。私は、映画館で1回、DVDで2回観ています。
でも、もしかしたら「欲望」の難解さは、アントニオーニがこの映画のヒントをもらったブリュッセル生まれのアルゼンチン人の作家フリオ・コルタサルの短編小説「悪魔のよだれ」のせいかもしれません(コルタサルはアルゼンチンの難解王? 「南部高速道路」という短編小説では、なぜか片道6車線ある高速道路が渋滞になってしまい、何カ月も車は動き出さず人々は高速道路と車で助け合いつつ暮らし始める。ところが、季節も変わったある日、突然渋滞は解消する……世界の異常に何とか合わせて暮らそうとすると、異常は嘘のように消える、そんな日常を逆なでするようなストーリーに満ちているようです)。
トップ画像のファッションモデルのヴェルーシュカさんについて少し。身長183㎝もあります。東プロイセンのケーニヒスベルクの貴族の生まれで、英語表記ではCountess Vera Gottliebe Anna von Lehndorffとなっています。伯爵家の次女だそうですが、父親のハインリヒが1944年にヒトラー暗殺計画に連座して処刑され、母親も投獄され、もともと100室もあるようなお屋敷育ちのお嬢様が大変悲惨な子供時代を送ったようです。
ヤードバーズと、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジについての言及もありがとうございます。
デヴィッド・ヘミングスは、少しテレンス・スタンプ(ウィリアム・ワイラー「コレクター」、パゾリーニ「テオレマ」、フェリーニ「世にも怪奇な物語」の第3話「悪魔の首飾り」)のポピュラーバージョンという感じでもありますね。

■フロイントさん

こんにちはァ。
>私は、映画館で1回、DVDで2回観ています。
おお、フロイントさん、筋金入りファンだったのですね!
> でも、もしかしたら「欲望」の難解さは、フリオ・コルタサルの短編小説「悪魔のよだれ」のせいかもしれません。
「南部高速道路」のストーリーいいですねえ。
まるでブニュエルの映画を観ているよう。
> トップ画像のファッションモデルのヴェルーシュカさんについて少し。
ヴェルーシュカについての情報ありがとうございます。
彼女の人生がそのまま映画になりそう。
ピーター・ブルネットが「それにしてもやせすぎだな」と言っていたのが印象的でした。
ツイギーといい、この時代のモデルのトレンドはこういったかんじだったのかしら。
> デヴィッド・ヘミングスは、少しテレンス・スタンプのポピュラーバージョン
なるほど。シンクロしますね。
難解ではありましたが、ある意味がっつり見応えありました。
後半、デヴィッド・ヘミングスがエージェントの家(パーティ中)に行くシーン:
一発キメた様子のヴェルーシュカに、「パリに行ったんじゃなかったのか?」
ヴェルーシュカ「あら、ここがパリよ」
というセリフが今や有名なセリフとピーター・ブルネットが言ってた。よし、覚えた!
いろいろ勉強になりました。
アントニオーニの映像美も満足です。
フロイントさん、多謝。


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