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横道世之介(小説) - 2015.09.09 Wed

【横道世之介】 吉田修一

横道世之介 (文春文庫)
吉田 修一
文藝春秋
2012-11-09



この前の吉田修一myブームの時(約2年前)買ったものの、5ページくらい読んだところで放置プレイ。
先日無性に読みたくなったが見当たらず。
結局図書館で借りて読みましたの。ほほ

2008年4月1日から2009年3月31日まで『毎日新聞』に連載された。
2010年度柴田錬三郎賞受賞作。
2010年度の本屋大賞3位(尚、この年1位は冲方丁「天地明察」、2位夏川草介「神様のカルテ」)。



世之介が大学進学の為、長崎から上京したところから話が始まる。
その「四月」の章から「三月」までの12章。
世之介大学一年生の一年間を描く。

東京での学校生活、バイト、サンバサークルと、一人の大学生の日常を追って行く。
ところが突然、中学生の娘が補導されたと警察から連絡を受ける話が始まる。
何のことだか読んでいるこちらはさっぱりわからない。

娘は18歳の男とつき合っていて、中学を出たら働いて男と一緒になりたいと言い出し親は苦悩する。
そんなこと言われたらほんと困っちゃうよな、と同情していると、次第にこの父親は世之介の大学時代の友人倉持の20年後であることがわかる。

吉田修一先生、またギミック使ってくんな。

物語は又世之介のノー天気な大学生活に戻る。
と、又も話は時空を飛び、世之介の友人加藤の20年後の姿を描く。

ゲイである加藤は今「相方」がいて幸せに暮らしている。
倉持も加藤もふと世之介のことを思い出し、懐かしく思うのだった。

物語は半ばから、1980年代の大学生活と20年後の友人たちの物語が交錯する。
20年後の世界は、まさに吉田修一的ドーナツメソッドで、世之介は中心にいながらそこはぽっかり穴が開いていて遠景である。

勝手にノー天気な話だと思っていた。
世之介の大学生活はおもしろく、読みながら何度も吹いた。
ところが物語の半ばに知らされる衝撃の事実にひどく打ちのめされた。
しかもそれは無造作にぽんと目の前に投げられる。

最後の「三月」の章、初めてカメラを手にした世之介が一本目のフィルムに収めて行く風景が泣かせる。うまい。

2001年に起きた新大久保駅乗客転落事故を題材にした。

===
今作は「吉田修一先生自選ベスト1」作品。
(ちなみに2位「悪人」 3位「パレード」)

読み終わった時、たしかにノー天気な話だけではベスト1にはならないよな、と納得したのだった。

先生のコメントによると:
――「悪人」のときが重装備で武装して戦うイメージだとすれば、
「世之介」は丸裸になって素の自分で戦ってみようと思ったんです。


前述したように、ゲイの友人加藤が出て来る。
知り合ったばかりの加藤と世之介の会話

――俺さ、あんま女の子に興味ないんだよ
――じゃあ、何に興味あるんだよ?
――何にっていわれても困るけど・・・
――俺、そんな同級生初めて会ったよ
――そうか


加藤としてはおそるおそるカミングアウトしたつもりだったけど、スルーするわけでも過剰反応するわけでもなくそのまんま受け止めた世之介との関係がわかるやり取り。

20年後の加藤は広告代理店で成功し、新宿の夜景が一望出来るマンションに住んでいる。
少し前、相方が突然倒れ救急搬送された時、15年つき合っているのに医者に会わせてもらえなかった。
症状や状況も知らされず、一人病院の廊下で頭を抱え込んでいた。
相方の母親が駆け付けて来た。
「こういうことがあるから早く結婚しろっていつも言ってるのよ」

はあ~せつないゲイカップルのあるある、病院での面会権。
相変わらずこういった描写がリアル。

2013年に映画化された作品では、加藤は綾野剛が演じている。
ということで、映画版へGO!

===
物語の中に1980年代の原宿「バンブー」が出て来て懐かしかった。
これを読んでいる時たまたま原宿近辺を歩いていたら、「バンブー」の看板がかかった小さな店があった。
前の場所ではなくて、交差点の近く、ロッテリアの裏あたり。
元の店はもうなくなっちゃったんだよねえ。確認してないけど。

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