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夫 中原淳一 - 2006.10.11 Wed

「夫 中原淳一」

夫中原淳一 夫中原淳一
葦原 邦子 (2000/04)
平凡社
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伝記=ある人の物語を書いた物は、書いた人の数だけ物語がある。同じ人のことを書いても、書き手の捉え方や切り口によっても違う。そういった意味で、先に読んだ「父 中原淳一」に続いて、本作はどうなのか、興味深く読んだ。



先の「父 中原淳一」で、葦原邦子の人となりや夫婦の関係は大まかにわかっていたので、読む前から「ああ、これはきれいごとを並べ立てて終わるんだろうな」と思っていた。物語の前半は、亡くなった淳一への感傷的な文章で、退屈だなあ、と思った。が、途中からおもしろくなってきた。

葦原邦子を表すのは、長男・洲一が表現した言葉がぴったりだ。「単純でざっくばらんな人」この本来美徳であるべき資質は、中原家では異質ゆえ、疎まれる。何事もきちんとやれる、もっとよく出来た人の方が淳一には良かったのでは?と葦原は何度も自問を繰り返す。が、淳一にとっては、葦原が「単純でざっくばらん」ゆえに結婚生活をやってこれたのである。このパラドックス!

葦原は、けして人の悪いところをあげつらう人ではない。が、後半は率直な物言いをしている。

―ある朝、廊下の片隅に、当時ぜいたくとされた外国製のコンパクトが転がっているのをみつけた淳一が、「あんまりもらいすぎて、物を大切にする気持ちと感謝の気持ちを忘れたんだね。僕はこれから一切何も買ってあげないよ。それが直るまで」夫からそんな宣言を受けた妻が話して他にいるだろうか。

すごく淳一らしいエピソードだなあ、と思う。葦原も、ちゃんと書くべき事書いてるじゃん。

この本は、中原淳一を同性愛者だと知って読む場合と、そうではない場合とでは、全く別のものになる。知らずに読めば、晩年の館山での高英男との闘病生活は、美しい友情物語になるし、知っていれば、妻の苦悩の物語になる。葦原は、高英男に関しては、感謝の言葉だけを書いている。

自分のDNAを残すことが、人間の本能の一つであれば、同性愛者の人も同様であろうか。 淳一が妻を疎んじていたのであれ、四人のこどもがいるということは、幸せではなかったろうか。

結局、夫婦のことは、他人にはわからないのではないか。葦原にとって、結婚生活は不幸だったかというと、けしてそうではなかったのでは?本書では、二人の出会いから新婚時代の様子を知ることが出来る。この幸せな数年のおかげで、葦原はその後の人生もやって来れたのではないか。

―淳一の持っている優れた才能に魅せられ、そのめったにない芸術性に傾倒し、尊敬の念だけで生きて来られた

どんなことをしても、どんな人間性でも、全て許されてしまうような人が、ごく一部いる。淳一は、そういう稀有な存在であったのだと思う。

淳一は、何でも事も無げにやってしまう人だった。私はこういうエピソードが好き。中で、私が一番印象に残っているのは、

―結婚後、はじめて知人の結婚式に私だけ出席することになった。美容院も近くにないし、どうしようかと思っていたら、「大丈夫だよ、僕がやってあげる」と、髪から着付けから全部淳一が支度をしてくれました。

でまた、その手際のいいこと。まるで魔術のように、ササッと髪をアップにまとめて、留袖に結びにくい丸帯もきちんとしめて。すごいよ~!ほんとになんでも完璧に出来るのよね。周りにいる人は尊敬しちゃうだろうな。オレだったら大ソンケーだよ~。ピアノも弾けるのよ。詩も書くし。

葦原は、ただ、こどもたちが父親としての淳一をどう見ていたのか、母親のこともどう批判するか、心に疑問が残るのだと。

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