2017-10

Four Seasons―季節は過ぎて街はまた緑に染まる - 2011.12.19 Mon

「Four Seasons―季節は過ぎて街はまた緑に染まる」 城平 海

Four Seasons―季節は過ぎて街はまた緑に染まるFour Seasons―季節は過ぎて街はまた緑に染まる
(2005/01)
城平 海

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絵に描いたように幸せな結婚直前のカップル。新郎になる男は、あるきっかけで自分の中のゲイに目覚めてしまった。上昇志向の強いキャリア・ウーマンの新婦となる女は、なにも知らずに誓いの口づけを交わす。本当の居場所はどこですか?アタシが見つけた本当の幸せ。あなたが見つけた本当の自分。


名作 <アンナ・カハルナ> の城平海作品です。

「喪失と再生」 の物語。


herちゃん、多謝。




一組のカップルの結婚式直前から話は始まる。
「#01 5月の新緑」 から12章、4つの季節をめぐり、二人の一年を描く。
そして二人が華々しい式を挙げた 「フォーシーズン・ホテル」 もからめての、本のタイトルとなっている。
1章ごとに、裕実と賢治視点で書かれているのでわかりやすい。
”男女” が主人公の話ではあるが、城平海ならではのゲイ目線がおもしろい。

外資系キャリアウーマンの裕実と一流企業に勤める賢治。
結婚式の一週間前、代々木公園を見下ろす高級マンションの新居、エアコンの取り付けに来た耕太という電気屋のにーちゃんと自然な流れで関係を持った賢治。
そこから混乱が始まる。
30歳にして賢治はゲイであると自覚する・・・。


しょっぱい。とってもしょっぱい話だ。

賢治の耕太へのストーカー行為、それが裕実にバレる。
裕実の妊娠・流産、賢治の二丁目通い。
さらに違うカレシとの関係がバレて、裕実は実家に戻り離婚に向かう。


のっけから裕実という女性の描き方にミソジニーの匂いを感じる。
仕事が好き、上昇志向、アグレッシブ、留学経験あり、肉食系女子。
「外資系あるある」イヤ汁出まくり。
こういう人、誰にでも知り合いに一人はいるのでは?

一方賢治の方は、エリート風を吹かせるわけでなく、出世欲もなく研究者肌。
物事に頓着ない。

はじめの裕実の賢治評 :
――短い髪でスーツの上着が張り裂けそうな身体の賢治。
――まるでクマの縫いぐるみのようなのんびりした空気を漂わせていた。

作者の思い入れが感じられるなあ。つーかゲイ受けするパターン。

自分の中の混乱に答えをみつける為、耕太を追ってはじめて二丁目に行く賢治。
何度か通う内、自分は二丁目で相当のモテ系と気づく。

賢治のカレシ 拓也の賢治評 :
――賢治はモテる要素が多すぎ。
「元体育会系アメフト部、鍛えた身体、京大大学院卒、
一流企業のビジネスマンで高収入・・・」


自分がゲイであると認めた賢治は突如己れのアイデンティテイに目覚める。

”原宿の「ゴールドジム」” に通い始め(笑)、今まで身なりに無頓着だったのに、伊勢丹メンズ館やバーニーズで買い物をするようになる。
髪もさらに短くし、スキンケアにも気を使い、ヒューゴ・ボスのスーツを着て出勤する(爆笑) → 絵に書いたようですね

読んでいるこちらは笑えるが、当の裕実にとっては笑い事じゃない。
自分は賢治に騙されていたと思っている。
賢治は結婚してから自覚したのであって、騙したつもりはないと言う。
離婚に至る原因は人には言えない。誰にも相談できない。
煮詰まる裕実。


裕実のボス、日本支社長のダニエルはゲイだった。
ある日偶然ランチで同席したダニエルに聞いてみる。
「あなたはいくつの時自覚したの?」

――年齢の問題じゃないんだ。僕らは子供の時から女の子と
つき合うべきだと教え込まされてきたからね。
その暗示からいつ醒めるかはその人次第だよ。

――できるなら彼を恨まないで欲しい。裕実の貴重な時間が無駄になるから


外資の日本支社ってけっこゲイの人多いよね。
本国から離れて家族や知り合いがいないからのびのび出来るのかしら。
(彼らって日本の骨董やらのアンティーク好きだったりしない?)


裕実と別れて賢治は思う。
――今までのぼくは自分自身について、なんて無頓着だったんだろう。
自分がゲイだということにこの歳で気づくなんて自分で呆れてしまう。
ぼくに人並みの自意識ってものがあったら、裕実をあんなに苦しめずに、
ぼくも悩まずに済んだのに。


終盤、裕実はパーティで知り合ったオヤジ(高名な建築家)から言われる。

――裕実にとって自意識が足りないくらいの彼だったから、
自分のキャリアに邪魔にならないと思えたんじゃないかな

――きみは知らない間に彼に対して自分が望む役割を押しつけてなかったかい?
彼の本当の姿を見ないで

――人間ってさ、いつの間にか自分以外のすべてを自分の人生の舞台装置に
してしまうんだよね。家族も友だちも恋人さえも。
相手が自分の思う通りに動かなかったり予想外の行動を取ったりすると、
だから感情的になってしまうんだ。
相手だって意志を持った人間なのに。


最後はいささか都合よすぎると思わないでもないが (裕実は山本が金も地位も名誉もないただのオヤジだったら鼻にもかけなかったろう)、 この話が  「喪失と再生の物語」 ならば、新しい未来が見えることでよしとしよう (何様?)

この話は丁度結婚式直前、タイミングの悪い時にゲイであることを自覚した為に起きた悲劇を描いている。
これが二人が恋人同士であったり、単に同棲中だったならここまでの悲劇にはならなかったろう。
結婚というのは、家族や会社、親戚・友人、全てを巻き込んだ、なにかとても重いものというのを感じた。

<アンナ・カハルナ> と同様 「ゲイ」 は、モチーフの一つであり、あくまで 「一般小説」 である。

拓也によると 「バツイチ」 というのもモテ要素になるらしい。

――結婚に縁がない大部分のゲイにとっちゃ、ひとつの勲章みたいなものさ


===
城平海らしい ”業界” うんちくも読んでいて楽しい。

◆スポーツジムはゲイの客が離れたら経営出来ない。
◆新宿の伊勢丹メンズ館やマルイメンズ館も、独身で可処分所得が多いゲイの客なしには存在し得ない。
◆新橋は二丁目に並ぶゲイタウン。都心のビジネスマンが多いから、客筋も雰囲気もいい。
などなど。

尚、この作品はコミック化しています。
このカバーのメンズが賢治ですね。

Four Seasons (爆男コミックス)Four Seasons (爆男コミックス)
(2007/09)
城平 海

商品詳細を見る


===

出版社/著者からの内容紹介
あまりにも当然のこととして捉えていた未来、結婚。疑いすら抱くことなく、そうすることが幸せになることだと思っていた。しかし、挙式直前に、新郎となる男は「本当の自分」に気づいてしまう。結婚が幸せへと続く道、無邪気にも信じていたそんな未来を断ち切られたときに、女は何を選び、そして男は何を捨てるのか。1章ごとに男女の視点を変えて描かれていく東京での1年間。
先行き不透明な現代に生きる若者達に贈る、本当の居場所探しの物語。著者の城平海は、ゲイ雑誌「G-men」で7年以上もゲイ向けポルノ小説を発表。この作品が、初の書き下ろし単行本となる。


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