2017-10

アンナ・カハルナ - 2011.09.16 Fri

「アンナ・カハルナ」 城平 海



アンナ・カハルナアンナ・カハルナ
(2005/10)
城平 海

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男に身を売ることでしか生きていけない哲也、32歳。かつては新宿2丁目でも知られた存在だったが、今では声がかかることも少なくなった、負け犬出張ホスト。そんな彼にある日突然、田舎の農村から指名が入って…。



姫がせっかく貸してくれたのに、放置プレイのまま幾星霜・・・。
ごめんなさい。

こんなにおもしろい作品をなぜもっと早く読まなかったのか。
遅読のリンダがあっちゅーまに読んだ。
ジムもさぼってむさぼり読んだ。






男に身を売ることでしか生きていけない哲也 32歳
かつてはそのルックスのよさで新宿二丁目でも知られた存在だったが、
今では歳のせいもあり 声がかかることも
少なくなった負け犬出張ホスト
そんな彼にある日突然
田舎の農村から指名が入る
不思議に思いつつも向かった先に待っていたのは――
(裏表紙より)


堕ちた男のしょっぱい話から始まる。
ガスも止められ所持金は2千円。指名は入らない。
ボスである 「人売り麻理奈」 から新幹線の切符を渡される。

――はい、これが切符。帰ってきたら精算よ
それとこれがメモ。ココに書いてある新幹線に乗るのよ
――どこまで?
――え? そこに書いてあるでしょ?
えーっとね、たしかアンナ・・・、アンナ・・・。
あ、そうだ、アンナ・カハルナだったわ

アンナ・カハルナ・・・
このタイトルを聞いた時、みな 「なんだろう?」 と思うだろう。
何かの呪文? 人の名前? ましてや新幹線の駅名なんて。
その答えはすぐわかるのだが、このネーミングセンスだけで、リンダはこの作者が好きになった。
それは、どこか純文学の香りさえして、読者をミスリードさせるかのよう。

そのアンナ・カハルナで降りた哲也を迎えに来たのは、昔憧れていた健二郎さんだった。

――ドアを開けて運転席から降りてきたのは肩幅が広くて背の高い男。
彫りの深い顔立ち、濃い眉と品のいい唇の形、
髪が短くて全体に若々しいけど、大人の品格みたいなものも感じる。
茶色のセルフレームのメガネが似合っている。


落ち目の出張ホスト、しょっぱいリアルな生活感・・・と思ったら、
健二郎さんがとってもSweet  (ネコだけど)

――俺が二丁目で得意の絶頂だった頃、
健二郎さんは雲の上の兄貴的な存在だった。
まだ三十代になったばかりで大学の助教授。
テレビの経済番組にコメンテーターとして出演したり、
週刊誌に経済記事を書いたり、いわゆるタレント先生のハシリだった。

健二郎さんは、寝たきりの父親の介護の為、大学をやめて実家に戻っていた。
麻理奈から、かつて健二郎は哲也目当てで二丁目に通っていた、と聞かされる。

あら、思い切りロマンチックな展開 

やがて麻理奈を通して、健二郎は哲也に一緒に住まないかと言って来る。
東京を引き払い田舎にやって来た哲也。

いつのまにか哲也は健二郎の大学の教え子で、農村研究の為に来ている、という設定になっていた(笑)

ほんとーに何もないド田舎の生活に最初は戸惑ったものの、哲也は農作業の手伝いのバイトに忙しい日々を送る。
初めは哲也を拒絶していた健二郎さんのお父さんも心を開き始める。
哲也は自分の居場所をみつけたのだ。

そんなある日哲也に、村の秋祭りの 「風神と雷神」 の舞い手になってくれないかという話が来る。
農協の耕太とベアを組み稽古を重ねる内、二人は惹かれあって行く・・・。

ゲイ小説と思って読み始めたら、なにやら違った様相を呈して来る。
東京で成功した息子のUターン介護、村の人々の噂話、
健二郎の家に出入りする幼なじみの洋子の存在、
健二郎の兄姉の醜い骨肉の争い、耕太の新妻の誘惑 ・・・

これはたまたま主人公がゲイ、という一般小説である。
ここで終っていたらたしかにそうなのだが、ここに 「神楽舞い」 をからめてきたことでこの作品は、かつてsato姫が指摘したように、たしかに 「男色小説」 の系譜に連なる。
いろいろな要素を詰め込んだ物語をうまく構成した秀作である。

とにかくおもしろかった。
今年の my BEST ランキング TOP3に入れたい。
あまりに一気に読んだので、読み終わった時、しばし呆けてしまったリンダなのだった。
健二郎さんのお父さんのエピソードには涙がとまらなかったとです。
最後の最後まで、話がどう転ぶか全くわからなかった。
読後感が良く、読んでハッピーな気持ちになれる心地よい一冊。
多くの人に是非読んで欲しい。


===

――世の中にはね、百パーセントのホモなんていないし、
百パーセント女好きって男もいないのよ


新宿の女帝 麻理奈の言葉がもうひとつのテーマになっている。
これは真理かも知れない。
この作品を読むと、この言葉に納得出来る。
世の中は曖昧で確かなものなんてないし、どんな可能性だってある。
要するに何でもありなんですよ。と受け取った。


あとがきによると、
ゲイの子供が年老いた親の面倒を看る傾向があるのは、国や時代を超えて共通なようです。
他の子供たちはすでに一家を構え共稼ぎや子育てで忙しい。
出来損ないだと思ってたゲイの子供は独り身、今や心置きなく甘えられる唯一の存在。
家族の形がすっかり壊れた戸籍に残ってるのは自分とこの子だけ。

――どうかこれから家庭を築く皆さんは、子供はできるだけたくさんつくって、
そして幸運にもゲイの子供を授かったら、宝物だと思ってほかの子よりも
深い愛情で強くたくましく育ててやってください。


これもまた "金言" である。

===

もともと <神楽舞> というコミックがあり、その原作を城平海が担当。

原作小説の「神楽舞い」は月刊G-menで3回に渡り連載。その後、この作品をベースにして「アンナカハルナ」というタイトルの小説単行本が書き下ろされた。「神楽舞い」はポルノ小説としての要素が強く、対して「アンナカハルナ」はゲイが主役の一般小説としてより広い読者を対象とした作品として再構成されている。(内容紹介より)

なるほど、「神楽舞」 ありきのお話だったんですね。大いに納得。


神楽舞 (BAKUDANコミックス愛蔵版) (ハードカバー)神楽舞 (BAKUDANコミックス愛蔵版) (ハードカバー)
(2009/01/23)
戎橋政造(漫画)、城平海(原作) 他

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