2017-10

フリーヘルド - 2008.07.31 Thu

「フリーヘルド」
(2007/USA/FREEHELD)



freeheld02.jpg

本年度アカデミー賞受賞! 魂ゆさぶる感動作、緊急上映!
25年間ニュージャージー州で警官として勤務したローレルは、49歳でガンにより余命半年を宣告される。パートナーのステイシーが遺族年金を受け取れるよう地元オーシャン郡に申請を出すが、同性であるがため却下されてしまう。
残された日々をかけがえのない絆を守るために戦いぬく決意をしたローレルの勇気は、人々を動かし、社会を動かした。
そして今、観るものすべての記憶に深く刻まれるだろう…。
アカデミー賞短編ドキュメンタリー映画賞、サンダンス映画祭特別審査員賞受賞作品。


【第17回 東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(2008)上映作品】



今年の映画祭 No.1 は、文句なしにこの作品。
オープニングから終わりまで 38分 泣き通しでした・・・。




今年のアカデミー賞授賞式を見ていて、「最優秀短編ドキュメンタリ」 を受賞した作品が、「同性愛」 を扱ったものと知り、見てみたいなあ、と思っていた。
しかし、ドキュメンタリで短編、まず見る機会はないわな、と思っていたら、
今年の映画祭で上映される、というではないか!?
神様、ありがと!


この作品は、ドキュメンタリとして、きわめてオーソドックスな手法を取っている。
何の目新しいこともない。
なのになぜ人々に深い感動を与えるのか。
(ああ、この記事を書く為、Imdbのplotを見ていたら、またうるうるしてきた・・・)


≪同 僚≫
冒頭、オーシャン郡の聴聞会(っていうのかな? 裁判所みたいなとこ)で、証言台に立つ男性。
25年間警官として働いて来たローレルの上司だ。

――25年、社会に市民に奉仕してきたローレルの遺族年金を、
ステイシーが得られないのはおかしい


続いて、ローレルのキャリア最初の相棒だった男性が証言台に立つ――

警察って、保守的で 男社会のところじゃないの?
その人たちがローレルとステイシーの為に立ち上がってるの?

もうこの聴聞会のシーンからすでに、涙、涙、ですよ、あーた。

FREEHELD03.jpg
自らカメラを回すシンシア・ウェイド監督


≪愛の絆≫
そしてカメラは、ローレルとステイシーの家へ。

――ローレルが買って、私がいろんなところを直したり、手をかけたの。
二人の思い出がいっぱい詰まった家だけど、遺族年金がなければ私には
維持できない。 税金もあるし、手放さないと。


ローレルとステイシーのつき合いは何年くらいなのだろうか?
肺がんに冒され、余命いくばくもないローレルは、目に見えて衰弱していく。
自動車整備工(男前!)のステイシー、仕事をしながら献身的に彼女を支える。
二人に医療費の支払いものしかかる。
二人の愛の絆が、又涙を誘う。
この二人を見ていると、「愛の絆」 に、異性、同性の違いがどこにあるの?! と思う。


≪尊 厳≫
更にこの映画が描いているのは、「人間としての尊厳」 であろう。
ローレルがいかに優秀な刑事だったか。

彼女が同性愛者であることを承知で、チームに引っ張ってくれた最初のボス。

――いいか、あのことはチームの誰にも言うなよ


って、まさに警察署も近所の人も、みんな知ってるやん、つう話だが(笑)

射撃の腕前は署内一で、やっかむ男たちも多かった。

冒頭証言台に立った、ローレルの最初の相棒 :

――私は保守派で、選挙も共和党支持だ。社会的権利など何の興味もなかった。
ましてや同性愛者の権利のことなどね。
でも、ローレルのこととなったら話は違う――


と、ローレルがいかに勇気ある優秀な刑事であったか、そんな彼女を元相棒として誇りに思っているか、嬉しそうに語るのだ。

又、元同僚だけでなく、近所の人も証言台に立つ。
これは、ローレルとステイシーが地域に溶け込み、”カップル” として認知されているからだ。

<誓いのkiss?> C.JAY COX 監督が言っていた。

――同性婚は(法的にどうあれ)、周りの人々に認められ、
祝福されるものであるべきだ


その伝で言うと、彼女たちは、まさにそれにふさわしい。

ローレルが警察署や近所の人の支持を得ているのは、彼女が
「一人の人間として、まっとうに生きて来た」 
からに他ならない。

同性愛者だからといって、ひとまとめにくくって欲しくない。
オーシャン郡は、ローレルという人間に敬意を払うべきだ、とこの映画は主張する。

≪戦 い≫
死を目の前にし、ローレルは戦う決意をした。
残されるステイシーの為に、自分の尊厳の為に、同性愛者の権利の為に。
この 「ローレル事件」 を 各メデイアは報じ、各地で 
「年金に関し、同性のパートナーも同等の権利を得られる」
 法案が可決する。
ローレルの勇気ある戦いが、社会をも動かしたわけだ。
ここで又、感動の涙です・・・。

≪死≫
誰でも人は死を迎える。
勇気ある刑事だったローレルも死を怖れ、愛する人を失うステイシーは悲しみの中にいる。
ローレルに死期が近いであろうことは、誰の目にも明らかで、カメラは残酷にローレルを追う。

――彼女を失意と絶望の内に死なせないでください


ローレルサイドの一人が委員会に訴えかける。
ローレルが死ぬ前に申請が認められなければならない。
迫り来るタイムリミット。
作りごとでなく一人の人間の命が今消えようとしている。


そして、申請は認可され、最後はローレルの葬式のシーンで終わる。
警察葬で、厳粛に送られたローレル。
遺族の最前列にはステイシー。
ローレルは幸せな人だよね。

しかし、これら全て、結局カミングアウトし、戦わなければ始まらなかったのだ。
ローレル、勇気ある女性だった。


とにかく濃密な 38分であった。
見終わって、これが 38分の短編か? と疑いたくなる充実度。
こういう作品がアカデミー賞を受賞して嬉しい。
その価値がある作品.
ドキュメンタリの持つ 「力」 を実感した一作。

その授賞式の時、壇上に二人の女性が上がった。
「同性愛」 に関した映画、というから、パートナー同士なのかと思ったら、スピーチで、一人はパートナーの名(女性名)を呼び、ラブメッセージを送り、もう一人は夫の名(男性名)とこどもたちに、THANKS&LOVE を送っていたのをよく覚えている。
(あ、でも今考えたら、ローレルとステイシーに呼びかけたのかも知れないな)

freeheld01.jpg
(左) ヴァネッサ・ロス (PRODUCER)  (右) シンシア・ウエイド(監督)
ヴァネッサ・ロスの父親・エリック・ロスは、<フォレスト・ガンプ>で
アカデミー脚色賞受賞 


シンシア・ウェイド監督のメッセージ :

――本作品の中で、強靭で仕事一筋の女性刑事は、死別を目前にしながらも、愛する人を守るために疾走します。
その行為は、ニュージャージー州、オーシャン郡を舞台に、国家規模での注目を集める革新的な法廷闘争を巻き起こしていきます。
『フリーヘルド』 は勝利の物語です。
この物語を通して私たちは、社会における大きな変化は、平凡なひとりひとりの人間が不正義に対して起こす、小さな、粘り強い抵抗の積み重ねによって可能になることを再認識するでしょう。


上映後、尾辻かな子氏(日本初カミングアウトした議員。元大阪府議会議員)と、弁護士の山下敏雅先生を交えてのティーチインあり。
これが又おもしろかった。
司法と行政の立場から、日米の制度の違いなどの話を交え、興味深い話が聞けました。
両人とも、トーク上手でわかりやすかった。(映画祭スタッフの司会の女性も良かったですよ)

山下先生は、二十代後半、黒いポロシャツ、チノパン、ヒゲと、会場にいたら、”違和感ない”タイプ(笑)
がっしりした体格もおいしいかんじ(何がぁ?)

意外だったのは、ゲイ婚といえば 「養子縁組」、日本では実に簡単に出来るそうな(「解消」も比較的簡単)。
その点、米国の養子縁組はいろいろ煩雑でそう容易ではないらしい。
(山下先生の画像及びティ―チインの映像は、akaboshiさんのブログ
 「フツーに生きてるGAYの日常」で見られます。akaboshi さんの映画祭リポートも充実です)


このプログラム、ノー天気で楽しい <不思議の国の女たち>、深いテーマの <フリーヘルド>、そして、ティーチイン、の三本セット、結果的に素晴らしいベストマッチでした。

映画祭ならでは、充実したプログラムに大満足でした。

ああ、ドキュメンタリだとつい リキ が入っちまって 長くなってしまっただ・・・。

パートナーの死に寄り添うカップルのドキュメンタリ、ということでは、
<ロバート・イーズ> (第11回 東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(2002)上映作品) を思い出した。
これも秀作のドキュメンタリ。 好きな作品。

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