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悔やむ人たち - 2010.08.02 Mon

「悔む人たち」
(2010/スウェーデン/Regretters)


regretters01.jpg


MTFトランスセクシュアルの2人が向かい合い、お互いの半生を語り始める。1960年代に青春を謳歌した彼らの口から出てくる言葉は、意外にも後悔の念ばかり。恋愛、カミングアウト、性転換手術…。後悔はしないと決意したはずの行動なのに、なぜ今は悔やんでいるのか。各国の映画祭で高い評価を受けた話題作。


【第19回 東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(2010)上映作品】


重く濃い58分だった。
いくら語っても語りつくせないような。



老年の二人が入って来る。
おじさん? おばさん? それとも男のおばさん?
実際どれも正解であり、どれも不正解とも言える二人だった。

マイケル(ミカエル)とオルランドは、MTF(Male to Female)トランセクシャルだが、今、性転換手術を悔み、再び男性の体に戻る手術を重ねている。
同じ立場の二人が向かい合い、それぞれの半生を語る。

この二人の場合、今言うところの「性同一性障害」とは違うように思う。
「自分の体の性と心の性が一致しない」「小さい時から違和感があった」
というのではないようだ。
(こういう場合でも性転換手術というのはありなのか)

オルランドの場合は、女性性も併せ持っていて、体を売って生活していたが、女性だったらもっと楽に生きられるという思いから手術に至る。
マイケルの場合はもっと複雑で、彼は女性が好きだったが全くモテなかったので、女性への強い思いが高じ、女性への同化という結論に至る。
こういう理由で手術をするもんかな?とチロには理解し難いものがあった。

現在の表面的な立ち位置は同じだが、二人の半生は対照的だ。
若かりし頃の写真や8ミリ映像が映し出される。
(TOP画像、二人の間にある機械がそれ。映写機みたいなヤツ)

オルランドはきゃしゃなからだで、若い時の彼は女性にしか見えない。きれいだ。
一方マイケルは、男性的ともいえるがっしりした体格で、美しさとは無縁。
この外見の違いが二人の半生を決定づけた大きな要因であるように思う。

オルランドは愛する人と結婚し幸せな日々を送る。結婚生活は11年続いた。
マイケルは孤独な日々を重ね、手術していいことはひとつもないというかんじ。
この二人の違いは、残された写真や映像に顕著に見られる。
オルランドにはたくさんの写真と愛する夫との幸せそうな8ミリ映像が残っている。
マイケルにはそれがほとんどない。

さて半生をふりかえり、今また男性の体に戻そうとしているが、オルランドはやって来たことに悔いはないと言う。
(ただ元夫を傷つけたことは深い心の傷になっている→結婚生活が破たんする修羅場のエピソードはあまりにドラマチックだった)
マイケルの方は後悔ばかり。

今の二人の違いは、かつて誰かを愛し愛されたことのある者とそうでない者なのではないか。
オルランドは幸せだった日々も、つらかった日々も今全て受け入れているように見えた。
そして今現在、彼なりに人生を楽しんでいるようだった。

この作品の成功は、同じケースの二人を並列して置いたことだと思う。
これがどちらか一人であったら、観客は一つのモデルケースだけ見て固定観念を持ってしまう。
そしてこの二人はみごとに対照的で、それゆえにそれぞれの半生が際立って見える。
後悔も人それぞれ、という描き方がいい。

===
上映終了後、マルクス・リンデーン監督と針間克己先生(精神科医。日本性科学会幹事長、性同一性障害研究会理事。性同一性障害に関する著作多数)を迎えてのQ&Aセッション。司会進行&通訳は 松下由美さん(プロ中のプロ。進行も通訳も文句なし! ステキ☆)

このQ&Aは実に有意義だった。
最初の針間先生からのいくつかの質問が実に的確で ナイッスクエスチョン! さすが。
監督から作品のエピソードも話され、へぇ~へぇ~の連続だった。

監督が最初にマイケルに会った時はうつがひどく、いつ自殺してもおかしくない状態だった。
それがオルランドとの対話を通じて好転。最近引っ越しをし、合唱団に入ったり前向きに生きている。
それを聞いて、こちらも救われた気持ちになりました。

尚、針間先生へ、日本でも手術後後悔している人がいるか? という質問が。
先生が知っている中でも2~3人いる、という答え。

人生において後悔のない人生などあるのか? という思いもあるが、この場合は重いものがある。。

二人が青春時代を生きた1960年代は、トランセクシュアルに対して本人や世間の理解度はもちろん、医者自身も果たして理解していたのだろうか。
この時代だからこその悲劇・後悔というものもあるのでは?

マルクス・リンデーン監督はジャーナリスト出身で、その硬派な持ち味が出ていた。
この映画祭でしか観られないような貴重な作品だった。

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