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セルロイド・クローゼット その1 - 2008.07.21 Mon

「セルロイド・クローゼット」
(1995/The Celluloid Closet)



セルロイド・クローゼットセルロイド・クローゼット
(2001/09/28)
不明

商品詳細を見る



ゲイ&レズビアンに対するアメリカ映画の中での見解は時代と共に変化してきた。
軽視、蔑視される時代を経て現在にいたるまでの変遷を描く本作は、 120本に及ぶハリウッド作品を検証し、削除されたシーンや、検閲の目を盗んで完成されたシーンの中に仕掛けられた驚くべき意味を暴き、歴史を追っていく。
ふれることすらタブーとされてきたクローゼットを開け放ち、映画と共に歩んできたアメリカの文化、政治、時代の潮流をも描きだす、貴重かつ感動的なドキュメンタリー。
インタビューには、トム・ハンクス、スーザン・サランドン、ウーピー・ゴールドバーグほか登場。

これを最初に観たのは何年前だろうか?
たしか、NHK-BSで放送していたと思う。
とにかく、ショックだった!
よくまあ、こんな作品を作ってくれた!


ロブ・エプスタイン&ジェフリー・フリードマン 作品(<刑法175条>)。
今一度観直して、やはりその労作に頭が下がる。
又、今観てもやはり、へぇ~! の連発!
120本の映画の中、
え、これ、こんな裏の面があったの?!
こんな映画あるのかあ?! 要チェックや~! とか。


――映画の100年の歴史の中で、同性愛が描かれた例はごく稀れです。
登場しても、物笑いの種だったり、哀れみや恐怖の対象でした。
でも、束の間の映像は忘れ難く、影響は最後まで残りました。

という リリー・トムリンのナレーションで始まる。
リリー・トムリンって、レズビアンとしてカミングアウトしていたんですね。
昔、ジョン・トラボルタが若かりし頃、この人とつき合っているっていう話なかったすか?
ガセだったのか。(けっこーな年の差カップルで、トラちゃん、守備範囲広いな!と思った)

lily web


トニー・カーティス 
――映画は人生の一部であり、人生を学ぶ場だ。
  ケイリー・グラントを見て、女性とのつき合い方やデートのマナーを知った。

ハーヴェイ・ファイアステイン
――こどもの時の僕は、仲間を求めて、映画の中にゲイの姿を追い続けた。
  学校で読ませるのは、ヘテロ物ばかり。 映画もそう。
  だからいつも翻訳してた。 自分の人生に合うように翻訳するわけ。


この作品は、ゲイ映画の変遷でなく、映画史の中で ”ゲイがどう描かれたか” というものである。
エプスタイン作品のいつもの手法で、過去のフィルムと現在のインタビューを交えた形式になっている。
インタビューに登場する面々は、トム・ハンクス、ウーピー・ゴールドバーグといった俳優たち、映画関係者=脚本家・監督・プロデューサー、中でも脚本家がもっとも多く、又、カミングアウトしている人が多いのにも驚かされた。

この二人のコメントからもわかるように、現代と違って情報量が限られていた時代、映画の存在は大きいものがあった。
社会が同性愛をどうみていたか、その変遷が映画に見て取れる。

’30年代、初のゲイキャラクター ”シシー”(=なよなよした男)
ハリウッドは彼を容認したが、”シシー”は、同性愛者とはみなされず受け入れられた。
紳士の格好をしているが、いわゆる ”おネエ”キャラだ。

アーサー・ローレンツ(脚本家)
――ゲイを皮肉るお決まりの手、不愉快だ。黒人にも同じ事をやったね。

ハーヴェイ・ファイアステイン
――僕はシシーが好き。 
否定的に描かれているけど、描かれることに意味があると思ってる。
たとえ否定的であれ、ゼロよりましだから。


女装の男は物笑いの対象だったが、<男装の女> は、笑いの対象ではなく、驚嘆の的だった。

cell11.jpg


この辺りの へぇ~ としては、

<クリスチナ女王>
レズビアンだったスウエーデン女王の実話の映画化。
女王をグレタ・ガルボが演じた。

CELL01.jpg
-姫は一生婿取りはしないのですか?
-いや、一生嫁を取らないのだ


そして、時代は ウィル・ヘイズによる「自己検閲システム」が発動されることに。

へぇ~としては、
<失われた週末>
性倒錯のアル中作家の話が、スランプに悩むただのアル中作家の話に変更され、

<十字砲火>
ゲイバッシングの小説が、反ユダヤ主義と殺人の話に。

<失われた週末>は、わがビリー・ワイルダー作品だが、ワイルダー本にそんな話あったかいな?
そのオリジナルはどんな話だったのか? 知りたいものである。

又、キワどい描写(と判断されたもの)は、検閲用のハサミが登場した。
カットされたシーンがいくつか紹介される。
よく残っていたなあ、よくみつけて来たなあ、と感心する。

けれど、同性愛はカモフラージュして秘かに生き残った。

<レベッカ>

――あれをレズビアンの映画だという人はいません。
  でも一ヶ所だけ、ゲイの観客にはピンと来るところがあります。

  
ダンヴァース夫人が後妻のジョーン・フォンティーンに、レベッカの高価な毛皮を見せた後、引き出しを開け、下着を取り出し、
「ほら、透けて見えるでしょう」
このシーンの官能的な匂いを、感じる人は感じるというのだ。

Celluloid+closet_217.jpg


ぐはーっ! 「ゲイの観客にはピンと来る」 って言葉、ヨワいなあ。

――ゲイの観客は、必死に手がかりを探し求める。
  マイノリテイの観客はみなそうだった。 見たいものを画面に探す。
  映画は見るものによって変わる。

このコメント通り、え、そうだったの? と全く違う見方が出来るのが

<理由なき反抗>

理由なき反抗 特別版理由なき反抗 特別版
(2007/12/07)
ジェームス・ディーン、ナタリー・ウッド 他

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サル・ミネオ扮する若者がゲイであることは、彼のロッカールームの写真や、ジェイムズ・ディーンへの憧れで感じ取れる。

スチュワート・スターン(<理由なき反抗>脚本家)

――同性愛か否か議論はあるが、そのつもりはなかった。
だが、作り手の内面は必ず作品に反映される。 更に、観客が自分も想像を重ねるわけだ。
あれは、優しさと友情を描いた作品だ。
性の枠を越えて、男同士の人間の枠を広げる試みだった。


こんなシーンがある。
「寒い?」(ジェイムズ・ディーンはブルゾンを脱いで、サル・ミネオに渡してやる。
「いいの?」
「当然だろ、ほら」

(サル・ミネオは受け取ったブルゾンをそっと顔に押し当てる。 ブルゾンの匂いをかぐかのように)

――この作品で、真の ”反抗” を体現しているのは、サル・ミネオの方だ。
  ホモフォビアの社会では当然彼は殺される。
  この社会で反抗すれば、ああなる。


celluloidC22.gif


ことほどさように、このドキュメンタリ作品を見ると、そういう見方もありなのぉ?! という作品ばかりなのだ。



しかし、この作品中、もっとも有名なエピソードといえばこれであろう。

<ベンハー>

ベン・ハー 特別版(2枚組)ベン・ハー 特別版(2枚組)
(2007/10/12)
チャールトン・ヘストン、スティーブン・ボイド 他

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ゴア・ヴィダル(脚本家)
――テクニックがあれば、言葉を使わずに裏のテーマを表現できる。
ベンハーはユダヤ人、マサラはローマ人、幼馴染だ。
今や政敵となっていがみ合う。それだけの設定ではあまりに退屈だ。
そこでワイラー監督に、私はこんな案を出した。
「15か16で別れた時、二人は恋人同士で、再会したマサラはよりを戻そうとする」
役者はスチーヴン・ボイト、ベンハーはチャールトン・へストン。

聞いたワイラーは青くなった。
「あけすけなセリフはありませんよ。 マサラの恋心だけ分かるようにします」
「これは、<ベンハー>だ。 『キリストの物語』 と副題がつく作品だぞ」
でも、結局、
「今よりはましだ。 やってみよう」
ワイラーはこの裏の設定を、ヘストンは悩むから、ボイトにだけ話せと言った。


この話を聞いてから、<ベンハー>のシーンを見ると、全く違う見方が出来る。
ボイトのセリフもしぐさも全てがいろっぽい。
そして、何も知らないへストンのまぬけっぷりがなんだか笑いを誘う。
しかし、知らないまま演技をしていた方が、”イノセント”な要素が出て、結果的に正解だったと思うのだ。

cell04.jpg


ゴア・ヴィダルって、私の中では 映画<カリギュラ> の脚本を書いたキワモノっぽい人 だったのだが、<ベンハー>の脚本なんてやってたの?? 
Imdbを見たら、たしかに関わってました。 但し、映画の中では non-credit 扱い。

===
<紳士は金髪がお好き> といった セックス・コメデイには、よくゲイが登場した。
ハリウッドでは、長い間、DF映画 が全盛だった。

DF? なんだそれ?

DF=ディレイド・ファック : ドリス・デイ映画のように、結婚するまで寝ないこと。
ほほ~、そんな言葉があったのか。 勉強になるなあ。

ロック・ハドソンのエピソードもおもしろい。

――ロック・ハドソンは、よく家で試写会を開いたが、ドリス・デイ映画は人気があった。
よく大笑いしたもんだ。 ゲイネタの楽屋オチがいたる所にあってね。
彼の演じる主人公は、女性と寝る為に、必ずゲイのふりをするんだ。
なんとも皮肉だった。
だって、ゲイの男がストレートの男に扮してて、ゲイのふりをするとは。


<ピロー・トーク>(夜を楽しく)

カクテルを飲む時小指を立てたり、ディップを食べたら、
「これはうまい! レシピを知りたいな。ママに教えたいんだ」


夜を楽しく (ユニバーサル・セレクション2008年第5弾) 【初回生産限定】夜を楽しく (ユニバーサル・セレクション2008年第5弾) 【初回生産限定】
(2008/05/15)
ロック・ハドソン.ドリス・デイ.トニー・ランドール.セルマ・リッター

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rockhudson.jpg
ロック・ハドソン 1985年にAIDSにより他界。
著名人としては世界で最初のAIDS患者となった


stagnite1a.jpg
こりゃおもろいフォト発見! サウナだ、サウナ!
上段右端=ロック・ハドソン 下段右端=トニー・カーティス


===
それでも多くの同性愛者がスクリーンに登場した。
数々のシーンをシークエンスで見せる。
ここまで アメリカ文学や映画に登場するゲイは、性的に自由な人たちと同じ運命を辿る。
苦しむのが当然ということだ。 ゲイなら課される罰は死だ。
性的に問題のある人は、悲惨な最期が待ち受けている。

しかし、ついに、ゲイを正面から見据えた映画が登場する。

<真夜中のパーテイ>(’70)

boysinthe.jpg
こんな原題だったのね。 これDVDは日本未発売みたい・・・

――全員生き残るのが新鮮だった。

笑えるコメントだ。 いや、笑えないコメントか?

(劇中のセリフ)
――もし自分をこんなに嫌わずに生きられたなら・・・。

マート・クローリー(<真夜中のパーテイ> 脚本家)
――彼らが自分を笑いものにするのは、自分を卑下しているから。
あの時代の意識が彼らにそうさせた。 まだ同性愛は精神病だと考えられていた。
ゲイバーで逮捕されたり、手入れもあった。 私も実際そんな目にあっている。
存在そのものを法律が取り締まっていた。

人間の本性を法で否定されるんだ。

===
<キャバレー>(’72) (ブログ 2/24)


キャバレー リバース・エディションキャバレー リバース・エディション
(2003/11/27)
ライザ・ミネリ

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同性愛を初めて謳歌した映画が、これと言われている。
主役のライザ・ミネリとマイケル・ヨークは、ラブラブの恋人同士、という記憶が・・・。

「女と寝たことがないのね。 男が好きなら、迫ったりしないから」


――彼はゲイだったが、そのことがごく当たり前に思えた。
  そこでは誰も他人のことについてつべこべ言わないのです。


いいなあ、これ!

「誰も他人のことについてつべこべ言わない」

それこそ、理想じゃないか!

「私、マクシミリアンと寝てるのよ」
「え、・・・僕もだ」

マクシミリアンを真ん中にした トライアングルラブの話だったのか・・・。
なんだか、ほんと自分の記憶に全く自信がない。
そういう映画だったっけ?

<刑法175条> の中に、ベルリンでは、1920年代からレズビアンバーやゲイバーがあった、というのに驚いたけど。
まさに、<キャバレー>は、理想郷の話だったのね。


時代は少しずつ変化しているのだった。


《その2》 へ続く ――
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