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林忠彦写真展 「新宿・時代の貌-カストリ時代・文士の時代-」 - 2009.12.27 Sun

林忠彦写真展「新宿・時代の貌-カストリ時代・文士の時代-」

久しぶりの更新ですね。こんなに開いたのはmyブログ史上初。
先週仕事上で試験があり、ここしばらくは試験勉強に取り組んでました(いちおー)。
なので、映画を見に行くのも自粛しておりましたが、企画展がいくつかあり、こればかりは見逃せないわーと自分へ言い訳。
試験も無事終わり(結果はまだですが)、これからその企画展の記事を上げて行きたいと思います。

第一弾がこの企画。

林忠彦は好きな写真家であります。
彼の写真展があると聞き、いそいそとでかけました。
またまた最終日一日前にすべり込み、でかけた12月18日は奇しくも林忠彦の命日でありました。
10月31日~12月19日 @新宿歴史博物館

bunsi02.jpg





林忠彦といえば何といっても代表作はこの作品でありましょう。
太宰生誕100年の今年、多くの人がこの写真を目にしたでしょう。

bunsi01.jpg

これ、会場の入口に展示してあって、「この椅子に座って太宰と記念写真を撮ろう!」企画でした。

この作品をはじめとする作家のポートレートを撮ったシリーズ <文士の時代>、戦後の日本を撮った <カストリ時代> などから代表作と新宿区内で撮影された作品及び新宿ゆかりの作家の作品を展示。

私にとって林忠彦といえば、朝日文庫から出た 
<カストリ時代 レンズが見た昭和20年代・東京>
ずいぶん前に買ったものだけど、これはコンパクトに林忠彦作品が網羅された秀作。
(これ、今は絶版なんでしょうかね。新装版が出てますね)

カストリの時代カストリの時代
(2007/04)
林 忠彦

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今回小さな朝日文庫の中の作品が、大きくなって公開されていてちょっと感激してしまった。

<カストリ時代>で一番好きな作品は、「犬を負う子供たち」
(この作品をはじめとするいくつかの代表作は、新宿歴史博物館サイト で見ることができます)

焼け跡(なんと三宅坂 参謀本部跡)で犬をおんぶして遊んでいるこどもの図。
焼け跡だというのに殺伐とした空気はなく、のどかで明るい。
雑種の犬もよくじっとおんぶされているもんだ。かわいい。
見る者になにか元気を与えてくれる作品。

この作品について林本人はこう書いている。

――旧参謀本部の後には焼け残ったレンガがまだ残っていて(中略)、ある日、子供が荒縄でイヌを背中におぶって遊んでいた。
自分の食いものもろくにないというときに、イヌに食べものを分けてやっている。
こういう優しさをもった子供がいれば将来の日本はまだ大丈夫だと気を強くした。
どんな苦しいときでも子供は童心という素直ないい面をちゃんともっているという、それを記念するような僕の傑作と思っている。



林は作品はもちろん、文章がいい。
今回の作品展にも作品の脇にエピソードの一文が添えられていた。

先の太宰のエピソード:(朝日文庫から)

――当時銀座の文春画廊の横町にある酒場「ルパン」が僕の仕事の連絡場所でもあった。ある日(中略)僕が織田作之助を撮っていると、反対側で(坂口)安吾さんと並んで座っていた男が突然わめき出した。
「おい、俺も撮れよ。織田作ばっかり撮ってないで俺も撮れよ」
べろべろに酔っぱらっていた。僕はちょっとむっとして
「あの男はいったい何者ですか」
「君、知らないのかい。あれが今売り出し中の太宰治だよ」(中略)
ところがもうフラッシュバルブが残りたった一個しかない。
さっそく便所のドアをあけて、便器の上に寝そべるようにして太宰治を撮った。
この時から一年半あとには入水自殺をとげたから、本当に貴重な一枚になった。


フラッシュバルブ残り一個 ―― 写真って ”一発”の力のようなものがあるな。

この作品をはじめとする <文士の時代>シリーズがやっぱりおもしろかった。
多くの人の「顔」を見て来た林が感服する顔というのがある。
たとえば志賀直哉がそうだ。(TOP画像左上)
多くの作家は皆いい顔をしている。
「文士」という人たちがいて、「顔」を持っていた時代であった。
我的に印象に残ったのは三島由紀夫の一枚で、おそらく三島邸で撮影されたもの。
この一枚に添えられた林の文が興味深い。

――三島は一番むずかしい顔の持ち主で、
名声にまだ顔がついていかなかったといえばいいのか


多くの文士の顔を見て来た林ならではの思いだったであろう。
林が指摘したようなことに対する自覚が、三島本人にはあったのだろうか。
あのまま生きていたら、老成した”いい顔”になったのだろうか。

また、この新宿歴史博物館所蔵の文学資料も併せて展示されていた。
三島の直筆原稿にまたまた感激。
「日記」と題したそれは <春の雪> 執筆中の頃のもので、ちょうど「第5回」51枚を書き上げたところ、と記してあった。

春の雪 (新潮文庫―豊饒の海)春の雪 (新潮文庫―豊饒の海)
(1977/07)
三島 由紀夫

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林忠彦の写真展が開かれるなんて思ってもいなかった。
これも太宰効果なのだろうか。
「写真」というのは 「出会い」である。
一瞬との出会い、作家たちとの出会い、林忠彦というのは幸せな写真家であったなあ、と思ったのだった。

帰路四谷三丁目交差点で、そういえば「イメージフォーラム」って、昔はこの交差点の雑居ビルにあったんだっけ・・・おっ、あのビルまだあるじゃん。
・・・しばし遠い目になったチロなのであった。

===
これも名作ですね。坂口安吾の仕事場。

――廊下をへだてたふすまをポッとあけた。
ああ、これは、と思った。仰天したのだ。
ほこりがフワッと一斉に浮き立って、万年床の綿がはみ出して、
机のまわりは紙クズの山であった。


文士と小説のふるさと文士と小説のふるさと
(2007/04)
林 忠彦

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