2017-10

噂の二人 - 2008.01.27 Sun

「噂の二人 」
(1961/The Children's Hour)

噂の二人 [スタジオ・クラシック・シリーズ]噂の二人 [スタジオ・クラシック・シリーズ]
(2006/12/16)
オードリー・ヘプバーン、シャーリー・マクレーン 他

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仲の良い二人の女学校経営者カレンとマーサが、同性愛者であるという噂を立てられてしまう。
その結果、マーサは傷つき自殺、カレンは婚約者と別れ、独り町を立ち去る……。
一人の少女の嘘によって、不幸を被った女性達の悲劇を描く作品。


昔一度観たのだが、ぼんやりとした印象しかない。
<セルロイド・クローゼット>で、この作品についてのシャーリー・マクレーンのインタビューに心動かされた。
もう一度観たいと思っていたら、丁度、NHK-BSで放送された。
えっ! ウソッ! ラッキー! と、観てみたのだった。



観直して良かったでした。
全く違う印象でした。
怖い映画だった・・・。
これ、元は リリアン・ヘルマンの戯曲だったのね。
(脚色もヘルマン自身)

28歳で、女性二人、寄宿制の学校経営ってすげーな。
学校の方もどうやら軌道に乗りつつある。

カレンには、婚約者 ジョー(ドクター) がいる。
早く結婚したいジョーに、「もう少し待って欲しい」となだめるカレン。
「学校経営の目処が立つまでは」という彼女の責任感の表れであった。

が、ある日、デートから帰って来たカレンは、マーサに、
「今学期が終わったら結婚する」
と告げる。
一度は、「おめでとう」と言ったものの、「やっと軌道に乗ったところなのに、勝手だわ!」と声を荒げるマーサ。

そして、おばとちょっとした口論になったマーサは、こう言われる。
――あなたは、ドクターが来るといつも不機嫌ね。
二人がしゃくに触るのね。 結婚したら、毎日やきもちだよ。
頭の中は、学校のことと、カレン・ライトのことだけ。
不自然(=unnatural)だよ。 変だ。


この話を立ち聞きしていたこどもの口から、この ”不自然”という言葉が独り歩きする。

一方、この学校には、メアリーという問題児がいた。
彼女の性悪っぷりは、最初から何度となく描かれる。
知ったかぶりで、うそつきで、マセガキで、ちょっと叱ると、具合が悪いと仮病を使う。

気絶したのがウソだとばれて、むしゃくしゃしたメアリーは、近くに住む富豪のおばあちゃまの家に行き、
「ライト先生とドビー先生は変だ」
と告げ口をする。

最初は相手にしなかった夫人だが・・・

――あたし声も聞いたし、音も聞いた。 変な音よ。
  それに、見たのよ。
――何を?
――とてもいえない。 耳打ちでいいなら。
  ・・・


この耳打ち部分はこちらにはわからない。メアリーは何を見たとうそをついたのだろうか?
この演出がニクい! つまり、この部分は、観客が勝手に想像するわけだ。(妄想でも良い)
このひとことが祖母を動かすことになる。

夫人は、メアリーの言葉を信じ、他の生徒の家に連絡する。
翌日、学校の前には次々と車が横付けされる。
生徒を迎えに来た車だった。
ここのところがとっても怖かった。
二人の知らないところで、何かことが起こっている。
理由を聞いても、みな口を閉ざしている。 本人たちだけ全くわからないのだ。
結局、こどもたち全員が退学してしまう。

二人の噂は町中に広まり、二人を見物に来る人も。
この人々の好奇の目がいやらしく、おぞましい。

町の人々から尊敬を受けていた二人が、一日にして違う見方をされる。
この辺りは、エリア・カザン <紳士協定> を思い出した。

ご存知の通り、あるジャーナリストが、ユダヤの取材をしていて、
「もし自分が本当はユダヤ人だ、といったら、周囲はどうなるのか」
という試みをする話。
そのひとことで、自分を取り巻く人々の態度が変わるのを目の当りにするという怖ろしい話である。

紳士協定紳士協定
(2007/05/01)
グレゴリー・ペック

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そして物語の終盤、怒涛の展開を見せる。
二人は、夫人相手に起こした裁判にも負け、その記事は全国に。
ジョーは、勤務している病院を、二人のことでクビになる。
遠くへ行ってやり直そうとカレンに言うが、賢明なカレンは、
「自分に対して疑いを持ったまま結婚は出来ない」と、別れを告げる。

そしてマーサはカレンに告白する。

――私はあなたを愛してた。 メアリーの話で気づいたの。
結婚させたくなかった。 独占したかった。
意識してなかったけど、初めからそうだった。
自分の中にあって気づいてない気持ちを、こどもが苦し紛れについたウソで初めて自覚したのよ。
人にはわかるのよ。
あなたの人生もめちゃくちゃにしたわ。 恥ずかしいわ。 私、死にたい。


その後、こどもたちの話は全てウソだったとわかる。
夫人が謝罪に来る。
そして、マーサは自殺する。

最初に観た時、この問題作にオードリー? と、何か違和感があった。
しかし、今回観ると、これはベストキャスティングね。
これを製作するに当たり、ワイラーは、彼女以外考えられなかったのでは?
(二人は、<ローマの休日>からの付き合いね)

このカレン・ライトという女性は、やましさのない、純粋な存在である。
ドクターにベタ惚れされ、大学時代からマーサにはまぶしい存在だった。
それら全てが、オードリーに体現されている。観客は一目見て、納得するであろう。
そして、噂が出てからも彼女にはやましいところが全くないので、毅然としている。
心優しくも強い女性なので、男が言えないことを自分から言ってやるのだ。
一人で生きていくことを選ぶのだ。
圧巻はラストシーン。
マーサの葬式、周囲の人々を尻目に、毅然と会場を後にするカレンの ”男前” なこと。
陰から見守るドクター、あんなに豪放磊落で男らしかったのに、カレンの前ではなんてケツの穴の小せー男なんだろうか。


<セルロイド・クローゼット> シャーリー・マクレーンのインタビュー:

――同性愛については議論しませんでした。 
こどもの ”告げ口”が映画のテーマなので、誰も先駆的な立場を自覚していませんでした。
問題を理解していなかったから、正しく取り組まなかったのです。
今なら抗議の声が上がるわね。 (告白のシーンも)マーサは泣き崩れるばかり。
本来の自分の為に戦うべきなのに。
あのシーンについてどういう意味だとか、あれでいいのかという疑問は出なかった。
あまりに無自覚で呆れるばかりです。
セットでも、テーマの深さに気付かなくて、オードリーとも何も話さなかった。
呆れるばかり。


ウィリアム・ワイラーは何を描きたかったのだろうか?
シャーリー・マクレーンのインタビューのように、”同性愛” の問題を声高に取り上げようとは思わなかったのであろう。
<セルロイド・クローゼット>を観てわかるように、この時代のハリウッドのコードはまだ厳しかったから。
もっと普遍的な問題として描きたかったのではないか?
ここでは ”同性愛”であったが、他の様々な差別や偏見、
ここでは、こどものウソであったが、思慮のない大人のひとこと、噂、陰口など、犯罪を犯したわけでもないのに、その人の人格や存在そのものまで否定される恐ろしさ。
全く普遍的問題だ。
21世紀の今日でも、似たようなことはいくらでもあるのではないだろうか?

children01.jpg


この話のうまいところは、”同性愛者” が、バッシングを受けるのでなく、恋人同士でもない二人があらぬ噂を立てられてしまうところだ。
関係のない人間も、どんな人間も被害者になり得る恐ろしさがある。
又、更にひねってあるのが、全く事実無根だと思っていたら、その時初めて自覚する、という点である。

結末は、<セルロイド>で何度も言われたように、この時代の ”同性愛者”は、悲惨な死が待ち受けている、というものだった。
が、この不幸は、多くの人に影を落とす。
自分の不用意な行動が招いた結果に、夫人は大きな責任を感じている。 又、自分の孫が病的な虚言癖だとわかり、傷ついた様は、同情を誘う(フェイ・ベインターの名演)。
ウソをついたこどもはどうだろうか。
ドクターは自分の男としての不甲斐なさを悔やむだろう。
こういった問題は、己が試されることになる、現代の 「踏み絵」 かも知れない。

今回、シャーリー・マクレーンのインタビューを見てからこの作品を観ると、全く違う感慨を持った。
ウィリアム・ワイラーらしい骨太の作品だった。
なぜ、ぼんやりとした印象しか持たなかったのか。呆れるばかりです(シャーリーのパクリ)。
秀作。

我的には、この時代(’61)、野外パーテイーで惜しげもなくサランラップをバンバン使うのに感心したり、金持ちの夫人の家では既に、リモコンテレビを見ていたのに驚いた。
当時のアメリカの豊かさを実感したのだった。
ギブ・ミー・チョコレート!
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