2017-10

イノセント その1 - 2009.03.23 Mon

「イノセント」
(1976/L'innocente)


innocente05.jpg


愛人にうつつを抜かしつつ、妻ジュリアーナの浮気を疑う嫉妬深いトゥリオ・ヘルミル伯爵。
夫の情事に悩み、憂鬱な毎日を送っていたジュリアーナは義弟フェデリコの紹介で、作家のフィリポと出会い、お互い好意を寄せる。
ある日、妻がフィリポとの子供を身ごもっていることを知ったトゥリオは、妻を激しく責めるが、やがて男の子が生まれる。冬の礼拝で人が出払った日、家に残ったトゥリオは・・・。



昨年 <ルドヴィッヒ>を観て、 「ひとりヴィスコンティ祭り」 で盛り上がった時、もう一度観たいと思ったのがこれだった。
観るなら大きいスクリーンで、と機会を狙っていたら、都内でやっているではないか!?
しかも  完全復元&無修正版!

12:00 @下高井戸シネマ



<イノセント> 完全復元&無修正版 を見て来たよ! と、herちゃんに言ったら、「さぞ長かったんでしょうね」
オレも当日、ああ、「ネムクナクナール」 を買う時間がなかった! と不安に思っていた(そんな商品名はありません。バッファロー吾郎か!)。
124分、全く眠くなる暇もなかった。
先の<ルートヴィヒ>のせいかしらね、ヴィスコンティというと、なんだか「長い&難解」のイメージが。
(<ルートヴィヒ>が 237分だからちょうど倍ですね)

19世紀末のローマ社交界、裕福な貴族 トゥリオ・エルミルは、美しく貞淑な妻 ジュリアーナがいながら、眩惑的なテレーザ・ラッフォ伯爵夫人を愛人にしていた。
だがある日、ふとしたことからジュリアナの不倫に気づいたトゥリオは嫉妬の炎を燃え上がらせ、再び妻への情熱をよみがえらせるのだが――


このトゥリオという男、利己主義で高慢で不実、無神論者、よくいえば自分の欲望に忠実な男。
いわば、ニーチェの超人を紳士にしたような人物である。
妻を省みることなく 「君は妹のようなものだ」 と残酷な言葉を平気で言う。
ないがしろにされたジュリアナが、魅力的な作家 フィリポに魅かれていくのは至極当然な流れ・・・と見ていて納得できちゃう。

innocente07.jpg
トゥリオはステキおやじとテレーザをめぐり決闘する
オヤジスキー イチ押し!(トゥリオの後ろで立ってる人ね)



魅力的な作家 フィリポ・・・フィリポ役 マルク・ポレルが 
もうもう 美しい   です。 
最初にフィリポが登場した時、カメラは静かにズームインするんだけど(今思うとこういうショットってヴィスコンティ映画の定番だな)、目が吸い寄せられてはっと気づいたらよだれが出てた・・・みたいな美しさよ(どんなだよ!)
終わってみると、彼のトータルの出番は数分で、ジュリアナと絡むシーンもそうない。
が、それゆえに実に印象深い。
やっぱりヴィスコンティの男選びのセンスは違うわね。

さて今回の 「完全復元&無修正版」 の 我的お楽しみのひとつ――シャワーシーン。
トゥリオは妻の愛人であるフィリポとジムで出くわす。
シャワー中のフィリポをみつめるトゥリオ。
「この時トゥリオは、男の体の ”一部” を見て、自分の敗北を悟ったのだ」
と言ったのは、たしか淀川さんであったと思う。
残念ながら30年前の日本公開時は修正ありだった。

フィリポ役マルク・ポレルは、トゥリオを敗北させるモノを体現しているのか!?
これは無修正でぜひ確認しなければ。 興味はつのるが、果たして――

ここのカメラがすごいです!
トゥリオ視点となったカメラは、シャワーを浴びるフィリポの足もとからゆっくり、ゆっく~りとなめるように上に上がっていく。

キャ!
 こんなにアップで、恥ずかしいワ・・・と思っていると、びみょーな手の角度で隠れて見えず。
がっくし・・・
と思っていたら、シャワーブースから出て来たところで惜しげもなく・・・。
(このシャワーシーン、30年前とちょっと違うような気がするけど)

マルク・ポレルをキャスティングする際、ヴィスコンティは ”そこ” まで配慮したのか!?
完全主義のルキーノだったらとーぜんよね。
カメラテストとかあったのかちら?
いやいや、それ以前にルキーノならきっと ”確認済み”ね☆ (・・・妄想はふくらむ)

え、それでどうだったかって?
そこんとこは、自分で映画を見てご確認ください。


トゥリオは、さんざん妻をないがしろにしていたくせに、不倫を知った途端、妻に執着し始める。
なんかほんとこどもみたいな男なんだよね。
このトゥリオの幼児性は随所に見られ、ま、時に女にとってはそんなところが魅力的に映る場合も。
これ、当初のキャスティングはアラン・ドロンだった、というのは 先の記事 に書いたが、見ながら、これがアラン・ドロンだったら・・・と何度も考えてしまった。
もしドロンだったら、映画を見たらしばらくはこちらの世界に帰って来られない状態だったろうな。
美しくワルい男ほど魅力的な者はない。

そんな時、妻の妊娠が発覚。フィリポの子だという。
トゥリオはこどもを始末しろといい、ジュリアナは拒む。
ところがフィリポはアフリカ旅行で熱病に冒され、あっけなく死んでしまう。

後半の怒涛の展開に、眠る間もなく見入ってしまった。(一度観たはずなのに)
これってこんなにドラマチックだったかしら?

この後、生まれたあかんぼを憎むトゥリオは、クリスマスの夜、雪の降る窓の外にあかんぼを置き去りにして殺してしまう。

innocente01.jpg


とことんおのれに忠実であり、ブレない。超人である。
これに関し、罪悪感もないし、言い訳もしないというトゥリオ。
そんな彼を愛人テレーザは、「あなたは ”化け物(モンスター)”よ」 と言う。
ジュリアナは、本当に愛していたのはフィリポ、死ぬまでこどもの為に祈ると言う。
妻にも愛人にも見限られたトゥリオは己の敗北を悟る――

タイトルの「イノセント」=罪なき者 とは何を指すのだろうか?
生まれて来たあかんぼは、「罪なき侵入者」 であったが、死んでしまう。
何事にも罪悪感を持たないトゥリオこそ、「イノセント」 であるとも言える。
意味深長なタイトルである。

「死んだ人間と母親とガキには勝てない」
というセリフを最近聞いたが、それってまさにこの映画にも当てはまるな、とうなずいてしまった。
(言った人は、辰巳鋭二)



狂気のバイエルン三部作の後、原点回帰、祖国イタリアに戻ってきたヴィスコンティ。
貴族の敗北、終焉を描き、この作品のダビング中、息を引き取った。


innocente03.jpg
陣中見舞いに訪れた バート・ランカスター(中)
オフのジェニファー・オニール(右) と ルキーノ(左)



visconti36.jpg
なんと美しいラストシーンか・・・ 

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