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薔薇よ永遠に―薔薇族編集長35年の闘い - 2006.10.07 Sat

「薔薇よ永遠に―薔薇族編集長35年の闘い」 伊藤 文学

薔薇よ永遠に―薔薇族編集長35年の闘い薔薇よ永遠に―薔薇族編集長35年の闘い
(2006/07)
伊藤 文学

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幾度の発禁処分を乗越えた雑誌『薔薇族』編集長が語る極秘エピソードの数々!
三島由紀夫が書いたとされる『愛の処刑』をめぐる貴重な論争を完全収録。
『薔薇族』的に見る三島由紀夫考は圧巻。
(「BOOK」データベースより)


やっぱり おもしろい!!
これだけ読んでいると、もちろん重複する部分はあるのだが、それでも尚、それぞれにおもしろい。


前半は、「薔薇族」以前、「戦後の昭和二十年代、三十年代のゲイ事情」
この辺りは、なかなか興味深い。

――1977年3月28日 読売新聞にこんな記事が出ていた。
人生案内の欄で、
「同性愛治らぬ主人=年ごろの子供もいるので心配」
精神科医 平井富雄先生が答えている。

<答え>
このごろ同性愛の男性・女性が増えています。(中略)
この際、良妻賢母のなりふるまいをやめることです。
出来るだけ男っぽい髪形や服装をすること。
そして平気で男っぽい科白で家庭内の会話をリードすること。
ご主人の「彼氏」より、数等まさった男性的女性に化身したら?

日本の一流新聞、一流精神科医の持ち合わせている、同性愛に対する認識はこの程度なのだ。
女が嫌いなのだから、いくら奥さんが男っぽくしたって、これはムリというもの。
宝塚の男役みたいに奥さんがしたら、これはマンガだ。


このドクターの珍回答で十分おもしろいのだが、さすが「薔薇族」、驚くことにこの記事を「薔薇族」に載せたところ、これを読んだ読者から、「この投書は、私の妻のものだ」という手紙が届いた。

――この手紙を回答者の平井先生に読ませてやりたい。
簡単になんにも同性愛のことを知らないで答えてもらいたくない。
このご主人の手紙を読むと、人間の業のようなものを感じてしまうのだ。


手紙は家庭の不和と、己の欲望との板挟みに悩む男の心情がうかがえた。
この主題は、後半の <第4章 「薔薇族」の読者が通らなければならない結婚という関所!> につながっていく。
この他、<少年愛は悲しい愛なのか> など興味深いテーマも取り上げられているが、この本のキモは何といっても、
<第3章 「薔薇族」的三島由紀夫考> である。

ここで取り上げられている 小説<愛の処刑> は、会員制の非合法雑誌<アドニス>の別冊<APOLLO> に掲載された。
作者の 榊山 保 は、三島由紀夫の別ペンネームではないかと噂されていた。

私がこの小説を初めて読んだのは、<QUEER JAPAN vol.2> (2000 )誌で、この時 
「三島由紀夫からゲイ文学へ」 というテーマでの座談会の後に再録されていた。

座談会の面子は、

柿沼瑛子(欧米ゲイ文学翻訳の第一人者)
西野浩司(日本の90年代ゲイ作家の第一人者)
伏見憲明(<QUEER JAPAN> 編集長)


ゲストの二人は初めて読んだらしく
「三島だって確証はあるの?」
「それともあまりに ”らしい”から言われているだけ?」
「三島は自分だって知られないように、わざと稚拙な文体で書いた、という話も・・・」


伏見の、(読んでみて) 「作者は三島だと思いました?」 という問いに対する答えが、今となってはおもしろい。
いや、さすがみなさん、いいところを突いているな、と感心しました。

さて、この座が大いに盛り上がったところで、本編登場!

もうこちらは、「どれ、どれ、見てやろおじゃないのお~」 と気合い入りまくり。

その時の感想は、今思うと 怪作!!

映画<憂国>を観た時と似たようなものだったような。
(だってテーマは同じですから)
ただ、稚拙な文章、あか抜けないタッチが、こちらの方がずっとエロチックであった。

あらすじはこうだ。
山深い旧家の離れに、市立中学体操教師 大友隆吉は住んでいる。
大友は三十半ば、筋骨たくましい独身男。
しかし、その日は暗かった。
そこへ、クラスの美少年、今林俊男が訪ねて来る。大友は喜ぶ。
今林少年は、大友に復讐の為来たのだった。
友人の田所が、大友の罰を受けて、大雨の中30分以上立たせられていた為、肺炎になり死んだ。
今林は 「田所の死を償うため、先生も死ぬべきだ」と言い、大友は 「君のような美少年に見届けてもらって死ぬのは本望だ」と言う。
美少年は、「楽な死に方はさせませんよ」と言い、<切腹> を勧める。
大友は、美少年が冷酷に自分に死を与えてくれたことに喜ぶ。
こうして <切腹の美学> が延々と描かれるのであった。


前半の話の展開は実に唐突で、大友と美少年二人で勝手に盛り上がり、「切腹」することがあっさり決まってしまう。
ちょっと、ちょっと! そんな安易な事でいいわけえ? といらぬ心配をしてみたくなる。

そこからは、常人に理解し難い、マニアックな世界が広がる。
たとえば、苦痛にゆがむ大友の顔に、
「すてきだよ、先生。 先生の苦しんでいる顔、なんてきれい! 僕、これを見たかったんだ」
俊男はその唇に接吻し、隆吉の顔中に接吻する。

さて、読み終わって三島かどうなのか? と問われると、「わからない」 としか言いようがない。
しかし、何とも昂揚した気分になった。(これはなんなんだろうか)

「薔薇族」では、73年5月号に全文掲載し、その後、83年12月号でも大特集を組んだ。
その時の考察、阿部正路(国学院大学教授)と、嵐万作は、<憂国>と <愛の処刑>の一文を引用し、両者の共通項を挙げていく。
そして、両者が共に同一人物であろうという結論に達する。
この辺りは実に完璧だ。
が、同時に、「いや、これは<憂国>を底本にして、誰かが創作したエロ小説だ、という疑いもないわけではないが」という論理も展開し、よく出来た考察になっている。

さて、長きに亘ったこの論争は、たしか2005年暮れ、三島の書類から <愛の処刑>の下原稿かメモだかがみつかり、晴れて三島由紀夫の真筆であることが明らかになった。
先頃完結した <決定版全集>にも収められることになった。
このニュースを新聞で読んだ時、実に晴れ晴れとした気持ちがした。

それを受けて各方面から、いろいろな証言が出始めた。
先の <「薔薇族」の人びと>で、伊藤文学が、挿絵を担当した 三島剛 から聞いていたので、早い段階から三島であることを知っていた、と言い、堂本正樹は <回想 回転扉の三島由紀夫>(2005)の中で明らかにしている。(後日記事UP予定)

――「君が喜びそうな小説を書いて、中井(英夫)のところの雑誌に載せるのだが、
筆跡が残るとマズイので写してくれないか」
と頼まれたのである


ことほどさように、知っている人は知っていたわけだ。
しかし、真相がわかった時は、晴れ晴れしたものだが、今になってみると、謎のままの方が良かったような気もしてくる。

ところで、三島剛の挿絵は、<QUEER JAPAN> では、4点掲載されているが、今回は巻頭の一点のみ。

2006年9月24日付朝日新聞に、中条省平による本書の書評が載っていた。
そこにこうある。

――中でも面白いのは、日本一有名な同性愛者 三島由紀夫をめぐってこの雑誌に寄稿された、ゲイ的観点からの論述で、ここでは紹介し難い露骨に下世話な話題も含め、三島の人間性の一面を浮き彫りにしている。

「紹介し難い露骨に下世話な話題」 とは 何なのか!?
読む前からワクワクしてました。
それが、83年の大特集の際、問題になった論争であった。
それに関しては、この後、<その2>で。
しばし、待たれよ。

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