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映画 「ラスト、コーション」 - 2008.03.12 Wed

「ラスト、コーション」
(2007/アメリカ・中国/色、戒/LUST, CAUTION)


lust02.jpg



1942年、日本占領下の上海。
抗日運動に身を投じる美しき女スパイ、ワン(タン・ウェイ)は、敵対する特務機関のリーダー、イー(トニー・レオン)暗殺の命を受ける。
やがてその魅力でイーを誘惑することに成功したワンは、彼と危険な逢瀬を重ねることに。
死と隣り合わせの日常から逃れるように、暴力的なまでに激しく互いを求め合う二人。
しかし、運命の時は刻々と迫っていた――。
『ブロークバック・マウンテン』のアン・リー監督が贈る、スリリングな禁断のラブストーリー。
第64回ヴェネチア国際映画祭にて金獅子賞受賞。


公開前、<週刊新潮> にこんな記事が載っていた。
中国ではこの映画を見て、アクロバティックな体位を真似したカップルが、次々と接骨院に来ているという。
又、中国向けは当局により大幅にカットされた為、 「ラスト、コーション」 を見に大陸から香港に人々が押し寄せている云々。

劇場公開版は、プレス試写よりさらにボカシが増えている、という話も聞いており、一体どんなもんなのか、否応なく期待は高まるのだった。

16:30 @Bunkamura ル・シネマ

(男の人が多かったです。 しかも年齢層高し)


はあ・・・つ、疲れた・・・。
観終わって疲労困憊。

濃密で複雑な映画だ。
そして、観終わってから、いろんなことを考えさせられた。


冒頭、麻雀卓のアップ。四人の女の手が麻雀パイを混ぜている。
指にはダイヤの指輪、手入れされた爪先に赤いマニキュア、小ぶりな婦人用の腕時計・・・。
きれいだ。
このオープニングに、私はすっかり惹かれてしまった。

1942年 上海。易先生宅でマダム四人が卓を囲んでいる。
そこに易先生が帰って来る。
マイ夫人と視線が合う。
そして、5年前の香港に遡る。

この脚本、1942年の上海=現在、そこから5年前の香港、そこから3年後の上海という三部から成っている。
この構成がよく出来ている。香港の部分が興味深い。

香港の大学に通うワン・チアチーは、演劇仲間のクアン・ユイミン(王力宏 ワン・リーホン)の誘いで、反日学生組織の一員となる。
学生6人で計画を練り、親日政府の政府高官 易の暗殺を企む。
(学生たちだけという段階で、稚拙な計画というのがわかるが)

ワンが貿易商の夫人になりすまし、易夫人と親しくなり、易に近づく。
ワンは清楚で聡明な女子大生だが、マイ夫人になり切ると別人のよう。(女ってコワい)
しかし、頭が切れて、用心深い易を誘惑するのは容易なことではなかった。
が、それでも二人の距離は次第に縮まる。

――どうするの? 次に誘いの電話が来たら、私は彼の愛人になるのよ。

青臭い正義感と愛国心から運動を始めた一行だが、ここで初めて、のっぴきならないところに来たと気づく。
男四人が協議している。

――あなた経験ないんでしょ、どうするのよ?

もう一人の女子大生が悲愴な顔でワンにたずねる。
人妻なのに、”経験” がないのはおかしい。
男たちの話し合いの結果、その夜、リャンがワンの相手をすることに。
(男子学生の内、経験があるのがリャンだけだったからだ)

ここまでの人物配置が巧みだ。
リーダー格 クアンは、ワンに好意を持っており、ワンもクアンが初恋の人なのだ。
又、リャンもワンに憧れている事が、その前のトラムのシーンでわかる。

クアンはこの時初めて、ワンを誘ったことを後悔し、無力な自分を自覚する。
クァンは無言である。

一方、公然と憧れのワンの相手が出来るリャンは幸福の絶頂であろう。
一人待つワンのベッドにウキウキやって来たりして☆
この辺のシーンが一番なまなましかったなあ。
以後毎夜、ワンのエロ修行は続くのだった・・・。

ところで、このリャンをやった子、どっかで見た顔なんだよなあ・・・誰だっけ?
ゲイ役をやったんだよ~ と、見ている間中、頭がもやもやしてた。

LUST06.jpg
真ん中が リャン くん ちょっと情けねーな

<東宮西宮>(’97)
ハッテン場の公園内 公衆便所で検挙されたゲイのコ?
でも、あの時のコと年代があわねーな。

lust09.jpg
ね、リャンくんに ちょっと似てるでしょ?

カチッ! ああ、そうだ、スタンリー・クワンがカミングアウト後、初監督した
<HOLD YOU TIGHT> (’97) だ!!
やった! そうだ、あのコだ!
→ クー・ユールン 何宇綸  すっきりした~!

HOLD YOU TIGHTHOLD YOU TIGHT
(2001/02/21)
チンミー・ヤウ、クー・ユールン 他

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本筋からそれてしまいました。

ところが、易は突然上海に帰ってしまい、計画は頓挫する。
なんて皮肉な展開・・・。

「私のエロ修行はなんだったの!? 私の青春を返して!」
ってなところだが、そんなことワンは言いません。

というわけで、今マイ夫人と称し、易と密会を重ねる女スパイは、プロでも何でもなく、ただの女子大生だった、ということがわかるのが、この 香港パートなのだった。
その点で、香港パートは非常に興味深いのだ。
尚、香港での易の部下に、銭嘉楽(チン・カーロ) が出ていてびっくら!

そして、3年後、上海に戻り大学に通うワンの元にクアンがたずねて来る。
ワンは再び組織に加わり、マイ夫人として易に近づく――

初めて密会するホテルの一室、易がいきなりワンの服を引き裂く。
ズボンからベルトを引き抜きワンを打ち、それで手首を縛り・・・(以下略)
暴力的なシーンに唖然! 
いきなり 李安にかまされたよー。まいりました。

以降二人は情交を重ねる。
ここで問題の ”アクロバティック” なセックスシーンになるのだが、なぜアクロバティックな体位でなければならないのか?!
観終わった時、その必然性がさっぱりわからなかった。
後でしばし考えた。

二人の人物造形――
ワンは5年前、上海よりは安全な香港に移る。ワンの母は死に、父は弟と英国に。
今はワンの英国までの旅費がないと父は言う。
その後、父から再婚したという手紙が届く。
ちらっと見えた結婚写真は、父と英国人の花嫁。
ワンは 「見捨てられた子」 なのだ。
その行き場のない孤独感が、計画に加わる一因になったのではないか。

一方、易は日本の傀儡政権の政府高官で、抵抗組織排除のために手段を選ばない男だ。
しかし、諜報活動、連日の取調べや拷問など(それはかつての同級生であったり)、彼は疲弊し傷ついていた。 孤独で過酷な任務。
その任務は、死と隣りあわせで、自分の命も常に危険にさらされている。
それはワンとて同様で、いつ正体が易側にばれるかも知れず、又、ミスを犯せば、仲間は彼女を許さないであろう(今や強力な組織がバックについている)。

明日をも知れぬ身であるという点でも、彼ら二人は似た者同士なのだ。
まさに、”エロスとタナトス”
そんな二人が交わす情交が、”フツーのセックス” で描かれるわけにいかないではないか。
アクロバティックなセックスシーンは、そんな二人が ”より深く通じ合う” 為の儀式であったのだ。

このシーンについて、李安 アン・リー監督はこう言っている。

――内戦で分裂する国と、一組の男女それぞれの分裂する心を重ねた。
  言葉にならない虚々実々を、喜びと憎悪の間で苦悶する性愛場面に象徴させた。
  2人が真実のありかを探りあうあのシーンで、タン・ウェイとトニーは究極の演技を
  見せてくれた。
  私の監督人生で、最も特別な思いを持って撮影したカットと言えます。


さて、結末はどうなるのか。
ワンたちは、易の暗殺に成功するのか――

原作は、張愛玲 アイリーン・チャンの短編小説である。
<ブロークバック・マウンテン> 同様、短編をよくもまあ、ここまでふくらませたなあと。
この点(原作が短編のものを取り上げること)に関して、李安は、「好都合です」 とはっきり言ったとか。 自分でいかようにもふくらませられるというのは、たしかにやりやすいのだろうな。

脇の人物造形も深い。
クアン・ユイミンは、ワンを愛しながら、遠くから見ているだけである。
この時代の中で、彼の心も二つに引き裂かれている。
ワンに任務を遂行してもらいたい気持ちと、こんなことはもうやめてもらいたいという気持ち。
ワンの前で、いや、時代の中で、クアンは無力なのだ。
そんなクアンの苦悩が伝わって来る、王力宏 熱演。
リーホンは、撮影終了後もしばらく気持ちはクアンのままで、切り替えるのが難しかったと。

――クアンはワンに言いたいことがたくさんあったのに、伝えられなかった。

そう、クアンはワンに対して、いつでも無言であった。

lust03.jpg
リーホン、凛々しいです

又、易夫人を演じる ジョアン・チェン も印象に残る。
いつだって、マダムのサロンの主役だが、夫との距離は遠く、ブルジョワ的暮らしの中でも幸せそうに見えない(もっともブルジョワとは、そんなものだが)
脇役ではあるが、存在感がある。 さすが ラスト・エンペラー夫人。

さて、今回のトニー・レオン。
ずいぶんやせて老けた役作りをしている。
その貧相なとこが、いやにリアリティを持つ。
ほんとのトニーはもっとかっこいいのに~!

物語の後半、情交の中、ワンが 「部屋を借りて」 とつぶやいた時、トニー・レオンがなんとも言えない、すごいいい表情をするんだよねえ。
自由に飛び回る蝶々が、やっと自分の手の中に入った、というような瞬間。

LUST08.jpg


湯唯 タン・ウェイが着るチャイナドレスがステキ 
この辺の時代のチャイナドレスにヨワい・・・。
<花様年華> なんか ヨダレ・・・(キタないな)
美術も良かった。
ほっそりしてて小娘に見えるが、28歳、大胆な演技も納得だわ。

lust10.jpg
初めて二人だけで食事したシーン
ロケ地は レパレス・ベイの <ベランダ> ね




LUST12.jpg
この日本料亭のシーン 良かったな。  二人の心が通い合ういいシーン 
歌を歌うワンが健気で、歌もまたせつなく心に響く



観終わった時は、全然ピンとこなかった映画だが、後からいろいろ考えるにつけ、違う感慨を持つのだった。
なんにせよ、一筋縄ではいかない作品であることは確かだ。

終盤、易がワンに送るピンク・ダイヤの指輪(重要な意味を持つのだが)、やけにゴージャスだな、と思ったら、カルティエのだって。

先週こんなニュースが。

3月7日の北京紙 「北京晨報」 によると、中国で昨年公開され、大人気となった映画「色、戒」(邦題・ラスト、コーション)の主演を務めた女優、湯唯(タン・ウェイ)が出演するテレビCMなどが国家放送映画テレビ総局の指示で放映禁止になった。
香港紙 「東方日報」は 「映画を見た中国の指導者が不愉快になったことが原因」 と報じている。


中国で、問題作に出るって大変ね。

lust11.jpg
李安 次はどんな作品を見せてくれるのだろう
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